いつもの地磯サボテン公園で釣り。ポイントを譲ってくれた常連さんとバトンタッチし、早速の一投目でヒット!結果はいかに。
逃した魚は大きかった
▼前回のあらすじ
https://gurenavi.jp/2017/0623172614.html
来た!
スプールから引き出される糸を見つめ体勢を整える。奴はすぐに走りを止めた。すかさず糸を指で押さえ合わせると
「ギューン!」
竿に乗った瞬間だった。
よっしゃ~!かかった!
竿を倒し起しにかかる。しかし奴も負けてはいない。必死に糸が走り出す。
竿を反対に振りいなしにかかるが余力を残してるのか中々こっちを向いてくれない。今は主導権を奴に取られている。なすがまま締め込まれただ耐える事しかできない。
何とか間合いを縮めたいが余りに引きが強すぎる。一回も主導権を取れないまま戦いは終わった。無情にも風になびく道糸だけが釣り人の敗北を物語っていた。今まで必死で周りの事に俺は全く気付いていなかった。
全てが終わり振り返ると何人かの釣り人が見物していた。
惜しかったですね。かなりデカかったですね!
と慰めの言葉を頂く。
デカすぎましたね…
答えるのが精一杯でワンチャンスをモノに出来なかった自分の未熟さを恥じた。悔しさをこらえ改めて仕掛けを作り直してると。
いやぁ~いるんですね。あんなデカい魚が!
見上げると、先ほど場所を譲ってくれたいつもの常連さんである釣り人が立っていたのだ。
いますよ。ここにはかなりデカいのが!
そうなんですか?最近私もよく来るんですが、そんなデカイ奴に巡り合ってないんですよ。あ、そういえば何度かお会いしてますよね?しかも遅くに来られて釣られてますね。
ハイ!最近よく来てます。ここは夕まず目が狙い目で、何度か朝早くやってみたけど余り良くなかったんで。いつもこんな時間に来ますね。
へぇ~そうなんですね。私はまだ足の裏(25~30cm位のサイズ感)しか釣れてません。釣り方にもやはり工夫がいるんでしょうね?
ええ、ここのクロはコマセを打ってもなかなか浮いて来なくて。ベタ底でマキエを拾っているので私は全游動でやってますよ。
あぁそうなんですね!半游動でタナを決めてやってました。なのでいつもコッパグレばかりで。
ナナメ浮きを手に取り見せると
ほう~板鉛が沢山貼ってありますねぇ!しかも、キズだらけで今までの戦いを物語ってますわ。
一度これでやってみます?
えぇ~!いいんですか?
俺は竿を渡し流し方とコマセの打ち方をひと通り教え、後ろから見学することにした。すでに時刻はもう16時を回っていた。そろそろ太陽が山にかかり、いつものゴールデンタイムを迎えようとしている。
いつもの地磯で運命的な出会い
流したウキが浮かず沈まずとほどよく潮に乗り流れていく。そろそろ潮壁だ。ナナメ浮きが潮にもまれ少しづつシモリ始めた。
ん?これは当たりですかね?
いや当たりじゃないかな。今潮壁に入ったからウキは見えなくなるけどまだ合わしたらダメだよ!
あとは穂先で当たりを取るんよ。
当たりはね。穂先を少し起こしたら穂先は戻らんけど、当たりじゃない時は立てれば穂先は戻るからすぐわかるはず!
とそんな説明を無視したようにいきなり
「ギューン!」
と竿を抑え込んだ。
きた!
男は竿を起しリールを巻きにかかる。
巻いたらダメ!
と俺は一喝する。
そんな慌てんでもいいから竿でいなして顔をこっちに向けるんよ。
幾度かの締め込みを交わし、差し出すタモに収まったのは紛れもない真っ黒な居付きの立派なクロであった。
おお~やったやった!
お互いに笑顔でガッチリ握手を交わす。かすかに小刻みに震える男の手が喜びをあらわしていた。
ありがとうございます!いるんですね?こんなデカイ奴?
時間帯と潮とのタイミングがマッチしたんやね!
この浮きいいですね、帰りに買って帰りますわ!
風呂で浮力調整したらいいよ。真水やからゆっくり沈んでゆくぐらいがいいかもね。
わかりました!さっそくやってみます!
何日か過ぎたある日いつものようにいつもの場所に行くと彼がいた。竿を置き駆け寄ってくる。
こんにちは!先日はありがとうございました!さっそく作ってきましたよ。
彼のポケットから一掴みのウキを見せる。買ったばかりの真新しいナナメ浮きに板鉛が貼ってあり、マジックらしきクロ点がついている。
嬉しそうに作る時の模様を語り始めた。しばらくは彼の話に耳を傾け時の立つのを忘れていた。さてそろそろ時合も来るだろうと仕掛け作りにかかった。
彼も釣り座に戻り竿を振る。しばらくすると次々に釣り人が釣りをやめてバッカンを洗い始めてる。別にいつもの光景で気にも止めないが
もったいないな~、今から時合で良型釣れるのに(笑)
と思った瞬間。
きた!
と言う声に振り向くと彼が竿をまげている。
時合がきたな!
バッカンを抱え彼の横に移動する。よく見ると竿の曲がりも中々のもので良型を予感する。取り込みを終え見ると遥かに40cmは超えた良型であった。
それからは、納竿までにポツポツと2人して10枚ほどのクロを捕り満足した一日であった。それ以来何故か?その釣り場での仕掛けはナナメ浮きの全游動が目立つようになっていた。彼とはいつここに行くと言う約束もすることもないが行くと必ずいると言う不思議。それからはその男、我がクラブに入り今は他県にいるが大会には必ずやってくる猛者。
その男、地元で何人かの弟子を抱え今もがんばっている姿をみると本当に釣りの繋がりは凄いなと思えるこの頃です。
完
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