幸島の「北の鼻」。船長の言葉を信じて、はかなくも裏切られた猿たちのご対面。何もなければ良いのだが、そんな事はなかった。
猿エサ合戦
エサ取り姿もあまり見えず静寂な時間が過ぎてゆく。再び気合を入れなおし、ひたすら撒き餌をし続ける。その時、予想を超えた事件が起きる事となる。
▼前回のあらすじ
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同じリズムでバッカンにシャクを、そしてマキエを掬い瀬際、潮目へと打ち込んでいた。ただ一点沖を見つめコマセを。とシャクをバッカンに入れたその時。
「コツン」
と何か硬いもの音がするではないか。何とも言えない違和感を感じた。
ん、何?これはなんじゃろ~?
とバッカンを見ると
えぇ~!何で~?
ビックリして思わず声が出た。何と猿の頭がそこにあったのだ。
俺は思わず荒げた声を出して威嚇をした。
こらぁぁぁあああ~!
心臓はバクバク止まらず何でここに猿がいるのか分からなかった。
良く見ると両手にはコマセを握り頬一杯頬張り口の周りは、沢山のパン粉をつけコチラを見上げている。
猿の目と俺の目が合った、猿は歯を剥き威嚇する。こちらも負けじと睨みつけた。危険を察知したのかヤツは後すざりする。目を外すとヤバイのでそのまま睨み続けた。これほど時間を長く感じた事はなかった。ようやく諦めたのか後向きに歩き出し海に入り泳ぎだし仲間の待つ向島へと帰って行った。
しばらくの間バクバクが止まらなかった。今までメンチ切ったのは人間と犬ぐらいのものだった。だが今回猿とは初体験であった。離れ島と安心してたのでまさか泳いで来るなんて想定外だったからだ。
サルは絶対こんから!
との船長の言葉が空しく浮かぶ…何かやる気が失せてきたので暫くタバコをふかしながら横になる事にした。
結局の釣果は?
いつの間にか眠ってしまい、気がついたら16時になっていた。
ヤバい!
飛び起きコマセを打ち竿を握る。納竿まであまり時間がない焦る気持ちで仕掛けを流す。付け餌はついたまま何度も打ち返す。
まだコマセが効いてないんだな。
仕掛けにコマセを被せ、暫くそのまま流してみた。すると全游動00がゆっくりシモって行く。
ん?当たりかな?
浮きは完全に見えなくなったので、出てゆく糸を指で押さえた。その時
「ギューン!」
と穂先を押さえこんだではないか。
っしゃ!来た!
いきなり奴は走り出してゆく。押さえた糸を離す。
勢いよく糸が弾き出る。しかしすぐに止まった。レバーブレーキで糸を出すとテンションがかかりすぎ、中々止まらず終いには瀬取られるのがおちだ。
抵抗をかけず一瞬で出すとこれが割と早く止まる。その瞬間奴は止まった。今がチャンスと強引にこっちを向かせる。
こっちを向けば何とか仕留められる。少しずつ間合いが縮まってくる。ようやく差し出したタモにと入ってくれた。
釣果はまんまるとした「口太メジナ」だった。もう納竿の時間が来るので磯を洗い流し船を待った。
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またひとつ引き出しが増えた一日となって納竿。
完
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