それは随分と昔の話に遡る。たしか「がまかつの初代インテッサ」が出た頃だった。(※インテッサ:釣具メーカーであるがまかつの最高峰の磯釣り竿)当時は良く宮崎県北門川へと通ったものだった。そんな頃に出会った男との話をしようと思う。

目次
苦い思い出のG杯
男Tとの出会い
初めてのグレ釣りへ

苦い思い出のG杯


いつもお邪魔する釣具屋さんに立ち寄り、昨日の釣果情報を聞きながらどこの磯に乗ろうかと考えていた。店長が急に

 

釣具屋店長

今月**日にG杯(※がまかつ主催の釣り大会)のチヌがあるけど行かない?

 

店の壁に大きく貼ってあるポスターを指さし店長は笑顔になる。良く見ると締め切りまで3週間足らずだ。しかも開催地が「長崎県の平戸」となっているではないか。

 

あぁ。忘れもしない釣研の大会で行ったあの悪夢が蘇ってきた。

 

総勢20数名と共に8時間~10時間かけて着いたのは真夜中あれだけ色んなポイントを探しまわり、結局は薄暗い街灯が灯ってた港に場所を決めた。着くやいなや俺は深い眠りについてしまった。

 

いきなりドアをコンコンと叩く音で目を覚まし、眠たい目をこすりながら辺りを見渡す。それは予想以上に小さい港が写っていた…

 

みんなはあちこちに散らばり既に竿を出している。その時は期待むなしく何も釣れずの納竿だったのだ。そんな苦い思い出が蘇ってきたがあの時はあの時だ。

 

苦い思い出を胸にしまい込み、店長に今回のG杯へ参加する事を伝えた。

男Tとの出会い


それから1週間経った頃…店長がとっさに一言。

 

釣具屋店長
釣具屋店長

あと一人G杯に行く人間がいるんやけど、連れて行ってもらえないか?

俺

あ、いいですよ!

 

誰が来るのか聞かなかったが、俺は即答で快諾の意を伝える。

 

なぜなら長い道中1人で行くのは荷が重く、話し相手がいる事で少し安心出来たからだ。今回は行く前日に店で紹介されたガッチリした青年だった事を覚えている。

 

男T
男T

初めまして。Tと申します。今日はよろしくお願いします!

俺

こちらこそよろしくお願いします!

 

Tは元気な声で笑顔で挨拶してきた。俺も笑顔で挨拶を返す。今回これが縁で今も良好な関係でいられている。釣りの醍醐味の一つでもあり、出会いはいつまで経っても楽しいものだ。Tは当時、チヌ釣り師でクロ釣り(グレ釣り)をやった事がなかったみたいだった。

 

初めてのグレ釣りへ


今回は磯にクロ狙いで行った。どんな釣りするんかな?と少し俺は見学をすることにした。午前中はあまり潮も動かなかったがようやく動き出したころ、彼に待望の当たりが…

 

竿は良く曲がり大物の予感を思わせる。と、その時いきなり穂先が戻った。

 

俺

ん?バレたか?

 

また竿が曲がった。

 

俺

オオ~まだバレてない、よしよし

 

と思ったのも束の間、また曲がった竿が戻ったのだ。

 

良く見るとTはレバーブレーキで糸を出していた。流石に締め込んだ竿は二度と戻る事はなく、瀬取られクロに軍配が上がった。何故、糸を出したのか?と聞いてみた。

 

答えはやはり、チヌ専門でやってたのでその癖が出た事。クロ釣りでは極限まで糸は出さないようにと伝える。

 

掛け方捕り方を見せるとTもなるほど…と納得した様子だった。クロとチヌの釣り方の違いを学んだようだ。

 

 

 

それから年月が経過し…北や南へ多くの釣行をTとともに重ねていった。今ではいくつかのテスターとなり、押しも押されぬ釣り師になってる姿を見ると出会った頃のことが今もなお思い出される。色んな場面で名前が出る度、頼もしく笑顔になれる瞬間だった。これからも元気にがんばって欲しいと願うばかりである。

 

そうそう、店長に紹介された長崎県の平戸にて開かれたG杯の結果は散々だった事だけ伝えておく。