慌てて車に乗り込み、エンジンをかけ急いで車を走らせる。今日行う仕事をどのように片付けていこうか、頭の中でぐるぐると思考整理をしていた。今は目の前の仕事優先で先ほど話をしていた釣り話が少し遠くなりつつあった、とその時。
Kのリベンジ釣行編 良型グレGETなるか?
急に携帯音楽が車内に鳴り響く。しまった、バイブレーションを設定し忘れた。着信画面を見てみるとなんとまたKからだった。
もしもし、どうした?
今なら運転中の携帯は違反であるが、あの頃はまだ厳しくもなく規制もなかった。車に乗りながら用件を聞くことにした。恐らくまた釣りに関する事だろう、ただとにかく俺は急いでいた。
さっき良いのがきました!かなりいい型でしたよ!
Kが一呼吸置き
が…バラシてしまいました。最後に締め込まれ飛ばされましたね…悔しいです。
釣れたのかと思ったが、バラシた報告だったのでちょっと俺も残念だった。
そうか…惜しかったな…
いまお話して大丈夫ですか?移動中ですよね…すみません。何でバレたかフィードバックが欲しくてとっさに電話しちゃいました…
素直すぎる位ストレートに聞いてきたので俺は拍子抜けしてしまった。急いでいる道中ながらも少し心を落ち着かせて考察してみる。
しかしここがKの熱い所で、必ず一人で行った時は電話で瀬の場所、潮の状況を知らせてきてそして最後には必ずって言う程結果を出してくる事が多かった。こういった性格のタイプはどんどん成長していく。結果を出し続ける釣り師の大前提の要素を彼は兼ね備えていた。
俺はまずどういうように魚を引っ張ってきたかを聞いてみた。
縦にもってきました!そして際まで寄せ竿でためてたんですが、そこから強い締め込みで竿ごと持って行かれバレました…
Kの悔しさが電話口からヒシヒシと伝わってきた。
小まい(小さい)奴なら縦に連れてきても楽に獲れるけどね?ただデカイ奴は瀬際で必ず縦に突っ込むからな。
バレる確率が大きいから、連れてくる手順は竿で顔をコッチに向かすように引っ張って来るようにし、なるべく魚を右か左に置くようにし横向きにタモ入れをするように心がける事。
わかりました。アドバイスありがとうございます!
そういう事で!じゃ!今が時合みたいやからがんばれ!
電話を切り、アクセスを思い切り踏みお客さん宅へ急ぐ。
お客さん宅へ到着し話を伺いながら淡々と仕事をこなす。そして一日の仕事がようやく終わり、それから釣友であるS氏家に向かって車を走り出した。その時、Kからの本日3度目の電話が鳴る…こんなになることは普通はないが。(笑)
もしもし!出ましたよ!49が!ついに捕りました!
早口ながらも大きい喜び一杯の声が、電話口から俺の耳に飛び込んできた。思わず二人とも笑った。
そうかそうか、良かったな~!おめでとう!
とこっちまで嬉しくなった。まだまだ話かったろうが、俺はS氏家に着いたので余韻を残しつつKからの電話を切った。それから2週間経ったころ…またまたまたKからの着信だ。
もしもし、お疲れ様です!早速ですが近々油津に連れて行ってください!お願いします。
とKから電話が来た…
続く…
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