それから、船長さんがやってきて一言。
皆さん、おはようございます!早速準備をして下さい!お願いしますー!
師匠!船長さんが来ましたよ!
むくりと起き上がった親方は、
さ~あ!気合を入れて行こう!
俺の肩を強く叩きながら豪快に言った。
和歌山の磯リベンジ 石鯛デビュー戦
早速車から道具を下ろし、船に荷物を積み込む。そして俺らは船に乗り込んだ。客室へと行くと、多くの釣り人の群れで満員御礼状態だった。
そんな常連さん達の中で、いっぱしの釣り師を装う俺がいた。今日はデビュー戦だから負けてられない。そんな思いだった。
少しでも寝ようと目をつぶるが気持ちが高ぶってるので眠れぬまま時だけが過ぎてゆく。しばらくすると急にエンジン音が小さくなる。
外に出てみると、真っ暗な礒岩に船のサーチライトが当たり初めて見る幻想的な世界がそこにあった。次々に人が降りていく、師匠はまだ座ったままだ。
慌てるな!わしらは、最後のはず。まあ~座っときな!
居ても立っても居られないソワソワしている俺を見たみんなが大笑いしてる。喫煙者率も高いせいか、海の上なのにタバコの煙が一段とモクモクしている。
俺は逸る気持ちを抑える為に、タバコに火を付け思い切り吸って、「ふ~う」と煙を吐いた。
次行きますから、荷物を出しておいてください!
よし!いくぞ~!
気合いの入った師匠の声が船内に響き渡った。いよいよ待ちに待った時がきたようだ。
サーチライトに照らし出された岩は感動ものだった。全て荷物を降ろし終わり、帰りゆく船に皆手を振る。しばらく夜が明けるまで動くなと言われ、少し眠ろうと俺は目を閉じた…
アキ!起きろ!
親方の声で跳ね起き、辺りは夜明け前の景色が広がっている。みんなは既に準備をしてる。気が付けばぐっすり寝てしまい慌てて起き上がる。師匠は一合瓶の酒を持ち
御神酒(おみき)を上げるから手を合わせ祈願するぞ。
御神酒とは?
御神酒(お神酒、おみき)とは、神饌には欠かせないもので、日本古来から伝わる祭礼において、お神酒(傾向として日本酒が使われる事が多い)を神前に供え、祭礼の終了後直会でお神酒を戴きます。神様に供えられ霊が宿った酒を頂き、また他の神饌と同様の神様と同じものを飲食するという意味があります!
また、造り酒屋によっては、新酒を神棚に供えるところもあるようです。つまり、神様にお供えをすることで霊力を宿った神聖なお酒を頂くことで、その神様の霊力を体内に取り込み、建前などの安全を願ったり、お宮参りで健やかな成長を願ったりします。
引用元:HITOIKI
朝日の登りくる先端に立ち御神酒を撒き、みんなも師匠に合わせ二礼二拍手する。
アキ!お前の練習の成果を今日は見せてもらうからな、先に仕掛け作っていいぞ!
師匠はウニ殻を打ち始める。急いで竿をセットし仕掛けにかかる。ピトンを打とうとウロウロしてると
お前は、そこでやれ!
師匠が指を指す。そこは潮が当たり良さそうな感じがした。全ては本の情報でしか知り得ない事で、果たして通用するかわからなかったのだが、直感で今日は釣れるかもしれないと淡い期待が出てくる。
さて!
気合いをいれ、初沖磯1投目を投げる。いい感じで飛んでいった。練習の成果でパーマ(バックラッシュ)もなくうまくいった。
おお~!なかなかええやんか!
と拍手してくれた。俺は竿を立て戻しと海溝を探す。
何度か繰り返してると、スーッと糸が入ってゆく所を見つけた。これは師匠から学んだ技だった。竿をピトンに掛け、尻手ロープをかける座り込んだ。
それから、どれ位たっただろうか。穂先を見てると「コツン、コツン」と前当たりがあるではないか。俺は思わず
師匠!今何か当たりました!
まだまだやで~慌てるな!
とその時!穂先が海中につき刺さった。慌てて俺は走り寄り、竿をピトンから外し持ち上げると、重量感のある手ごたえがグンッと体全体に伝わって来るではないか。
それから、奴は一気に走り出した。チヌ釣りしかやった事のない俺は
なんじゃコイツ!エライ走りよる!
耐えるのが精いっぱいでとても糸の巻ける状態ではなかった。腰でためながらひたすら耐えた。
続く…
https://gurenavi.jp/2017/0811035134.html
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