兵庫でたまたま仕事関係の付き合いから石鯛釣り師と出会い、そこから急速に「釣り」に目覚め始めた俺。運命というか、お互い引き寄せ合う何かがあったのだろう。そんな物語の続きをまた綴ってみようと思う。
- 目次
- 家族団らん
ついに和歌山の磯に立つ
家族団らん
親方の自宅に到着し、チャイム鳴らす。
▼前回のあらすじ。
https://gurenavi.jp/2017/0729221319.html
「ピンポーン」と扉越しから音が響くと同時に、足音も一緒に近づいてくる。
ハーイ!
と女性の声がした。
ん?親方の彼女?奥さん?
ガラッと戸が開き、笑顔で女性が出迎えてくれた。
どうも~いつも主人がお世話になってます。今お風呂に入ってますけど、どうぞお上りになってください!
とご丁寧にご挨拶を頂く。そういえば釣りネタばかりで親方の話は正直あまり聞いてなかったなぁ…と思いながら、ちょっと意表をつかれた気分だった。
いい~え!こちらこそ、親方にはえらいお世話になってばかりで!
と深々と頭を下げた。
早速部屋に案内され恐縮してると、
いつも仕事から帰って来ると藤田さんの話ばかりするんですよ~。よっぽど嬉しいんでしょうね?弟子が出来たって、子供が出来た時みたいな喜び方でしたよ(笑)
と気さくに笑っていた。俺は少しばかり恥ずかしくなったが、そんな親方を想像するのもギャップがあってとても面白かった。
なので最近はとても楽しそうにしてるのでこちらも嬉しくなりますよ。本当にありがとうございます。これからも主人をよろしくお願いしますね!
と丁寧に笑顔で言われ、こちらも少し緊張ぎみに笑顔で頭を下げた。
と、その時
お~い!いま上がるぞ!
と向こうの部屋から親方の大きな呼ぶ声がした。
はい!はーい!
と言いながら、ちょっとお待ちくださいねと気遣って頂き、バタバタと部屋を出てゆく。しばらくすると、タオルで頭を拭きながら
監督さん、お疲れさん!
キンキンに冷えたビールを片手に握り、笑顔で出迎えてくれた。そしてじゃ乾杯としますかと俺にコップを手渡し、ササっと酌をしてくれた。
ビックリしたろ~!何も話してなかったからすまんかったな!(笑)うちの嫁さんは週に1回掃除と洗濯にやってくるんよ。
なるほど、と言いながらビールをちびちびと飲んでいると鍋を抱えた奥さんが
大したご馳走はありませんが、お腹いっぱい食べて下さいね!
と、カセットコンロの上にすき焼き鍋を置いた。俺は恐縮して頭を下げた。まだ俺は不意打ちな感じの状況に慣れないでいた。
監督さん、明日和歌山に行くよ!仲間に聞いたら結構いい型上がってるらしい、明日は大丈夫だよな?
はい!問題ないです。あとそれから親方!その「監督さん」はやめてください(笑)仕事を離れたら、親方の弟子ですから!
あははは~!せやな。そんなに言うなら、名前で呼ぼうか!何がいいかなぁ…
と嬉しそうに言った。しばらく考え込んだ親方は
監督さんの下の名前は何やったかな?
宗明(むねあき)です。
じゃ~!宗明やからアキと呼ぼうか!それでいいですか?監督さん!(笑)
いやいや元に戻ってるやんと思い、俺は思わず笑ってしまった。
親方!敬語もおかしいし、また「監督さん」って言いましたわ、なんなんすかぁ~(笑)
俺も嬉しかったのか、少しほろ酔いで良い気分になってきたようだ。台所で聞いていた奥さんも笑っていた。それを見て3人で大笑いして久々に楽しい夜となった。
鍋もすっかり終わり、2人して明日の準備に取り掛かり始める。
アキ。そういえばカッパ持ってきた?
えっ?ないですね。明日天気悪いんすか?
いや!そうじゃなくていつも常備しとかな、何があるかわかれへんし?なければ、俺のあるからまぁ問題ないわ!
隣部屋で奥さんが聞いていたのか、
子供の遠足みたいですね(笑)
とソロっと部屋に顔出しながら楽しく笑っていた。
ついに和歌山の磯に立つ
家族団らんのような楽しい時間も終わり。明日の全ての準備を済ませ、奥さんがセットしてくれた布団に潜り込み、俺はあっという間に夢の世界へ誘われた。夢の内容はあまり覚えてないが、釣りネタだったような気がしないでもない。
翌朝。奥さんの用意してくれた朝食を二人してササっと済ませ、車に乗り込み走り出した。後ろで笑顔で見送る奥さんに手を振る、二人だった。
家を離れ、高速と下道を快調に走る。途中で親方の仲間と合流し、親方の行きつけの釣り具屋に立ち寄った。エサとなる赤貝をたんまり一途缶を3つ積みこむ。ただこの時思った…
あの一斗缶は何だろう。何に使うのか。しかもこんな重そうなものも一緒にもっていくのか?(苦笑)
その疑問後、ハッと理解できた。全てにおいてその量は予想以上の多さで驚きの連続だった事は、今でも思い出す。
ようやく釣り場に到着し、多くの道具を持ち親方達の後ろを俺はついてゆく。今回は地磯でやると聞かされていたので歩きは覚悟の上だったがあれからかなり歩いている気がする。
額からは容赦なく噴き出す汗、疲れたと思ってると、
うーし!ついたぞ~!
親方の声で俺は辺りを見渡す。
おお~スゲェ~!
声が自然に出た。ゴツゴツとした岩が続く波が荒々しく岩をたたく。初めて磯を見た俺は感動した。結局皆テキパキ動いているので、感動に浸る暇もなかったが。その後、親方に言われるままに道具を降ろし、さっき買った赤貝を渡す。
ええか~!まず、赤貝を割って身を取り出すで!
まず、お手本として親方はハンマーで割ってみせてくれた。
俺も見よう見まねながら割り始めた。赤貝の血しぶきでたまに顔を汚す。他の仲間も同じように割っている、親方は一斗缶に入ったウニ殻と赤貝を混ぜ、手で海に向かって撒きはじめた。今でいう撒き餌を作る際の箱、「バッカン」の役目を一斗缶が果たしていたのだ。
準備もあらかた終わり、仕掛け作りを始めた皆を見て、俺も本を熟読した知識を開花させようと自分なりにセットしてみる。
おお~、いいやん!
アキ、今から投げ方を教えるから竿を持ってきなぁ。
みんなの邪魔にならない場所に移動して
ええか~!リールのレバーを起し振りかぶって投げるんや!投げたら仕掛けが着水するのがわかるから、着水前に指で糸を押さえる。じゃないと糸がパーマになるからその状態を「バックラッシュ」と言う。そうならないようにしっかり指でおさえるんやで~!わかった?
そして、親方自ら投げて見せてくれた。
とりあえずうまくなるまでがんばれ~!
言われるままに何回も何回も投げ続けた、いくらやってもパーマばかり何度も何度も糸をほぐす。あれだけ現場の池でやったのにまだまだやなと思った。
やってるうちに何とか、サミングも出来るようになってきた。今日はとにかくこれだけマスターしようと昼ご飯もそこそこに延々と投げ続けた。頭の中にある綺麗に投げるイメージだけは完璧に出来ていたが現実は甘くない。少し休憩することにした。
俺はエサをつけてもらうために、座り込んでる親方の元へ。
だが結局帰るまでエサをつけさせてもらえず、投げ方とエサの付け方だけで納竿となった。みんなと一緒にやれなかった事は少し残念ではあったが何とか、投げ方もエサの付け方も自分なりに満足出来きた日だった。
俺は道具を片付けていると、親方とその仲間の皆さんがストリンガーに50~60cm位の石鯛を何枚もぶら下げ帰ってくる。
おお~!石鯛かっこいい!皆スゲェ~!
あははは~!小さい小さい!
と笑いながら皆が言っている。
えぇ~これで小さい??えぇ~?いつもどんなん釣ってるんだろう?
未知の世界でまだまだ良く分からなかったが、何故かワクワクし続けている自分がいた。
続く…
https://gurenavi.jp/2017/0803225124.html