カゴ釣り師達の前で、フカセ釣りでグレを釣った証明をしたあの頃。手探りの中でやっていた磯釣りだったが、少しずつ世の中も変わりつつあった。

 

目次
磯釣り歴史が変わる瞬間をみて
釣りで学んだ事 失って気づいた事

 

磯釣り歴史が変わる瞬間をみて


誰でも幼い頃。父親に連れられ、川や海に行った記憶がおありの方も多いかもしれない。それからやがて大人への階段を登りながら、数多くの出会いがあり、それをキッカケに色んなジャンルへと突き進んでいく人生。

 

俺も叔父が釣りをしていなかったら、「グレナビ」を通じた情報発信なんてしてないだろうと思う。やはり全ては縁がもたらしてくれるものだと言っても過言ではない。

 

とある日。その日を境に磯の歴史が変わり、ちょうど船長宅に呼ばれてこう言われた事を記憶している。

▼前回のあらすじ

【磯に表札を】グレ釣りの原点 隣の叔父編(第一話)

 

船長
船長

やっぱりお前の言う通りやった。「フカセ釣り」とか言うやつはすげぇ~な。いつもあんなにコンスタントに釣るのが凄い。

船長
船長

今までずっとカゴ釣り師と一緒に乗せてたけど、カゴの連中が最近どうもフカセ釣り師達には敵わんといつも言うとるよ。

船長
船長

これからフカセ釣りみたいな、こんな釣り方に変わってくるんやろうと考えさせられたわ。そんな事で今度からカゴ釣りとフカセ釣りを分けて乗せることにする。それから何人かがお前にカゴ釣りを辞めるから、フカセ釣りを教えて欲しいと言うとったぞ。

船長
船長

そう言う事でよろしく頼むわ!

 

と笑顔で船長は言う。

 

船長
船長

そうそう、先日すまんかった!あの時お前に1人でやれって言ったのはカゴの客と賭けをしててよ。

船長
船長

お前が勝てばフカセとカゴを分けて乗せるようにすると。お前が負けたら俺が1万払うとこだった。助かったよ!お前が勝って!ありがとね~(笑)

 

笑いながら勝手に色々と語る船長だった。

 

 

釣りで学んだ事 失って気づいた事


今こそカゴ釣りと一緒になんてありえないが、当時はフカセ釣りがほとんどいなく当然のようにカゴ釣りと一緒に乗せられていた。そんな過酷な時代だった。

 

そんなフカセ釣りを確立する為に、手探りの状態で何の見本も手本もなく。ただ、ひたすら試行錯誤を繰り返す毎日だった。どうしたら食い渋りのクロを攻略できるか?そればかり考えあの手この手をつくし、幾つかの冬を数えていた。

 

そんな事は今なら本を開けば一行二行の解説で済まされる。何と恵まれた環境だろう。今から始める人もすぐに上手くなれる。手本や見本があり、先生に手取り足取り指導をもらえば一番手っ取り早い。しかしながら、我々が沢山の月日をかけ、それでもまだまだ極められないこの釣りの奥深さはなんだろうか。

 

知れば知るほどにこれと言う正解がない。釣りを通して沢山の出会った方達に何が伝えられているだろうか。いつも思う事はあの人と出会えた事で今の自分があり、あの時ただ通り過ぎていたらまた違った人生を過ごしていたかもしれないという事。そして違う道を違う人と歩いているだろう事と思う。

 

釣りと巡り会い色んな事を学び、色んな人達と語り合った。そしてひとつの目標が出来、その為に一生懸命働き頑張った。やがて手の届く所までいったが、その内に目指すものが少しずつ少しずつ変わってきた。

 

それは家庭と言う大事なものであった。それは生きてゆく上で必ず通る道であり人間のなすべき事でもある。そんなわかりきった事ではあるのに中々難しい事でもあった。

 

釣りに没頭し過ぎた為、大事なもの大事な人に悲しい想いをさせてしまった。この世の中一度にふたつを手に入れる事は不可能であるって誰もが知っているのに何故だろう。そして手に入れた喜びに酔いしれ、失ったものに気づかなかったあの頃。

 

そうさ、ひとつ手に入れたら何かひとつ失うものがあることを忘れないでおこうと。

 

完…