ついに念願である磯に立つこととなった俺は、結局スタートラインにすら立てなかった。前回の釣行で釣り仲間たちが釣りあげた良型の石鯛を思い出し、ワクワクとドキドキが止まらない日々を過ごす…

 

目次
頭の中は石鯛釣り
和歌山の磯リベンジ 石鯛デビュー戦

 

頭の中は石鯛釣り


前回の親方達との釣行から、一日でも早く石鯛を釣りに行きたいという想いが膨らむばかりだった。今日もひと仕事を終えると、食事をダッシュで済ませ現場の近くにある池向かう。毎日毎日サミングや投げの練習に励んでいた。そして夜には本を読み漁り、竿を眺めては磨き手入れする。そんな日々を毎日繰り返してた頃。

 

▼前回のあらすじ

【磯に表札を】石鯛釣り師 兵庫で運命の出会い 和歌山の地磯釣り編(第二話)

 

とある日。お昼になったので現場から事務所に戻り、昼食を取っていると1本の電話が入る。電話にでてみると、受話器から親方の威勢の良い声が聞こえてきた。

 

鉄工筋 親方
鉄工筋 親方

もしもし、アキか?今週の土曜日にまた石鯛釣り行くから良ければ出ておいで!

 

また「和歌山に行こう」とお誘いの電話であった。毎日毎日、夢にまで見ていた本当のデビュー戦だ。この日の為に毎日練習を重ねていたので、待ちに待った日がようやく目の前にきていた。俺は今にも飛び上がる想いだった。

 

俺

あと2日、あと2日頑張れば…石鯛にあえるかもしれない。

 

と逸る気持ちをぐっと抑え仕事に精を出す。無駄のないように段取り良く仕事をこなしていたので、休日出勤も勿論ない想定だ。そして、金曜日の長い一日が終わり、明日の釣行に向け急いで食事を済まる。ダッシュで風呂に入り車に道具を積み込み始めた。

 

俺

竿ヨシ!リールよし!仕掛けよし!ライフジャケットよし!磯タビよし!ヒップガードよし!忘れ物なし!

 

となぜか1人指差し連呼している自分がいた。仕事でのクセが抜けないものだなぁと思い、準備万端で俺は車を出発させる。

 

親方の自宅は泉北ニュータウン近くを目指す。(大阪府堺市)車に乗ると俺は飛ばし屋に豹変してしまう癖があるので、今日ばかりは落ち着かせながら綺麗な運転を心がける。

 

俺

今日は慎重に。いつもより慎重に。ネズミ捕りに捕まったら全てパーになる。無事故無違反で。

 

己に言い聞かせ続けながら、順調に国道をひたすら走る。週末の夜のドライブも割と楽しい。仕事での戦いを終えた後、次は別の更なる戦いに向けて俺は行く。なんだか熱い想いを込めながら色々と考えているうちに、気が付けば師匠宅に到着した。師匠と奥さんに挨拶を済ませ、荷物を積み込みなおす。

 

師匠いわく、今夜は船宿でゆっくり過ごして朝早く磯へ行くらしいので早めの出陣となった。途中に師匠のお弟子さんを乗せ、皆満面の笑顔だ。

 

俺

うっしゃぁあ!いざ!和歌山へ!!

 

途中、石鯛のエサと人間のエサ(?)を調達し、またハンドルを握る。車のラジオから流れ来る拓郎の「夏休み」を聞きながら車は軽快に湾岸ロードをひた走る。これもまた大人の青春みたいで懐かしい心地よい気持ちになっていた。

 

それから我々一行は、ぼんやりと明かりの灯る船宿に到着した。まだ釣行は早いと言う事でひとまず仮眠をとる。しかし俺は気持ちが高ぶりすぎて、どうもすぐには眠れそうになかった。

 

師匠達はすぐさま高いびきをかいていてる。羨ましい限りである。仕事も忙しいんだろうけど、そもそもこういった釣行への場数の違いだろう。そんな事を考えながらどれ位時間が経ったろうか。船宿の扉が開き、続々と釣り人が出てきた。

 

俺

おはようございます!

 

俺が挨拶をすると、向こうも微笑み返し会釈してくれた。何となく話声を聞いてると地元の方な感じがする。この辺りの領域をよく知っている熟練者だろうか。

 

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