随分昔の話になるが、クロ釣りにハマリ過ぎて休みの度には必ず磯にいた時期があった。それは真冬の寒い日。ホームグランドにしていた「宮崎県の日南」に少し飽きがきていた頃だった。

 

目次
お調子者の山ちゃん
宮崎県北門川 初の釣行

 

お調子者の山ちゃん

俺

たまにはどこか行ってみて~なぁ~。

 

釣具屋で出されたコーヒーを頂きながら店長と話していた。そんな時

 

山ちゃん
山ちゃん

こんちは!店長魚拓とってくれ!

 

後ろで威勢の良い声がした。振り向くと大工の山ちゃんが両手でクーラーを抱え笑顔で立っているではないか。

 

俺

おー山ちゃん。どこ行ってきたんか?

山ちゃん
山ちゃん

へへへ~!門川に行ってきました!

 

隠し切れない満面の笑顔で山ちゃんは言う。

 

山ちゃん
山ちゃん

デカイ奴が入れ食いだったんですよ!

 

そしてクーラーを開けて見せてもらうと

 

俺

うわァ~!デケ~!

 

クーラー満タン状態の中の50cmクラスのクロを見せらつけられ、カルチャーショックを受けたのは言うまでもない。なんせあの当時、日南の油津で仕留めたクロ48cmが俺の最大記録だった。まだ50オーバーを獲った事がなく、かなりのショックでメラメラとクロ釣り師魂に火がついた。

 

俺

よし!今度は~俺が!

 

と思ってはみたが、門川は行った事もなく情報や知識が皆無だった。色々と考え、何となく釈然としなかったが素直に山ちゃんに連れて行ってもらう事にした。

 

それからは店では山ちゃんに門川の話を永遠と聞かされる。その話によると県北の方の船は大きく瀬付けも押しづけらしく安心して瀬に乗れるそうだ。

 

俺

ほ~う!スゲ~!

 

現在は県南でもどこでも押しづけが当たり前になってるが、当時はいつも行く県南方面では飛渡りが当たり前で慣れるまでが大変だった。よく船長にはよく怒鳴られていた。

 

船長
船長

早う~飛ばんか!

 

初心者はすごく怒られた。船が上下するので飛ぶタイミングがわからずオロオロするばかり。それを見かねて慣れてきたころには初心者にはよく声をかけたものだ。

 

俺

いい?波が上がったり下がったりしてるから上がった時上がりきった時に飛ぶ!そのタイミングを覚えておいて。その時が来たら飛べ!って叫ぶから。わかった?

 

そんな県南には瀬渡しのこのような登竜門があったので、それに比べ県北の瀬渡し何と優しいと感動した事か。

 

俺

へ~ぇ!あっちはそうなんだ?

山ちゃん
山ちゃん

県南はほとんどが飛び渡りが基本だから慣れないと危ないですしね!

他のお客さん達
他のお客さん達

たまに海に落ちたりしてね。そんな時に限ってメチャメチャ寒い冬だったり(笑)

 

気が付けば他のお客さん達も会話に混ざって談笑していた。

 

俺

それも回収時ならまだ救いやけど、これから乗瀬と言う時に落ちたら地獄だね。最悪の釣行物語に5年語り草になるのは間違いないなぁ~!(笑)

 

そんな店の中では他のお客さんも巻き込んで笑いの渦が巻き起こっていた。まだ1~2度しか言ってないのに、さも常連さんぶって山ちゃんの話はまだ続くようだ。

 

山ちゃん
山ちゃん

県北はとにかく瀬もデカイし、ポイントもたくさんあるから釣り人も多いですよ。

 

自慢げに話すそんな山ちゃんを置いて裏口から店を出た俺だった。

宮崎県北門川 初の釣行


その夜、山ちゃんから電話があり

 

山ちゃん
山ちゃん

もしもし。今日はありがとうございました!良ければ今週の土曜日門川に一緒に行きませんか?

 

勿論行く!と返事した。

 

何故か。釣りに行く前日の夜は昔から変わらず、遠足前の子供と同じ心境だなぁと思わされる。その夜も初めての県北。初めての門川と想像するだけでワクワクし眠れない夜を過ごした。

 

どれ位経っただろう?ウトウトとしてて車の音で目が覚めた。窓を開けると月夜に照らされた車から山ちゃんが降りてきた。

 

小さな声で

 

山ちゃん
山ちゃん

ぉはよぅござぃます…(眠)

 

俺も眠気眼ながら小さな声で挨拶を返す。道具を積み込みようやく出発となった。車の時計は朝3時を刻んでいる。山ちゃんが門川初めての俺に気遣い、

 

山ちゃん
山ちゃん

出船は5時となってるけど、今の時間帯なら1時間半ぐらいで行けますから!

 

タバコをふかしながら話した。

 

闇夜光るヘッドライトすれ違う車も流石にこの時間ではまばら。そして、門川の標識がライトに浮かぶ。高鳴る鼓動を気付かれないようにさりげなくタバコに火を点けた。

 

しばらく細い道を入って行く。ようやく水銀灯の照らされる港が見えた。

 

山ちゃん
山ちゃん

着きました!

 

見渡せば、沢山の漁船が浮かんでいる。

 

山ちゃん
山ちゃん

あれが我々が乗る船ですよ!

 

指さす先には大きい瀬渡し船があった。

 

俺

おお!デカイ!すげぇ~!

 

思わず声を上げてしまった。当時はそれぐらい大きなカルチャーショックを覚えたものだ。

 

続く…

 
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