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【磯に表札を】石鯛釣り師 兵庫で運命の出会い 和歌山の地磯釣り編(第三話)

ついに念願である磯に立つこととなった俺は、結局スタートラインにすら立てなかった。前回の釣行で釣り仲間たちが釣りあげた良型の石鯛を思い出し、ワクワクとドキドキが止まらない日々を過ごす…

 

目次
頭の中は石鯛釣り
和歌山の磯リベンジ 石鯛デビュー戦

 

頭の中は石鯛釣り


前回の親方達との釣行から、一日でも早く石鯛を釣りに行きたいという想いが膨らむばかりだった。今日もひと仕事を終えると、食事をダッシュで済ませ現場の近くにある池向かう。毎日毎日サミングや投げの練習に励んでいた。そして夜には本を読み漁り、竿を眺めては磨き手入れする。そんな日々を毎日繰り返してた頃。

 

▼前回のあらすじ
https://gurenavi.jp/2017/0729223833.html

 

とある日。お昼になったので現場から事務所に戻り、昼食を取っていると1本の電話が入る。電話にでてみると、受話器から親方の威勢の良い声が聞こえてきた。

 

鉄工筋 親方

もしもし、アキか?今週の土曜日にまた石鯛釣り行くから良ければ出ておいで!

 

また「和歌山に行こう」とお誘いの電話であった。毎日毎日、夢にまで見ていた本当のデビュー戦だ。この日の為に毎日練習を重ねていたので、待ちに待った日がようやく目の前にきていた。俺は今にも飛び上がる想いだった。

 

あと2日、あと2日頑張れば…石鯛にあえるかもしれない。

 

と逸る気持ちをぐっと抑え仕事に精を出す。無駄のないように段取り良く仕事をこなしていたので、休日出勤も勿論ない想定だ。そして、金曜日の長い一日が終わり、明日の釣行に向け急いで食事を済まる。ダッシュで風呂に入り車に道具を積み込み始めた。

 

竿ヨシ!リールよし!仕掛けよし!ライフジャケットよし!磯タビよし!ヒップガードよし!忘れ物なし!

 

となぜか1人指差し連呼している自分がいた。仕事でのクセが抜けないものだなぁと思い、準備万端で俺は車を出発させる。

 

親方の自宅は泉北ニュータウン近くを目指す。(大阪府堺市)車に乗ると俺は飛ばし屋に豹変してしまう癖があるので、今日ばかりは落ち着かせながら綺麗な運転を心がける。

 

今日は慎重に。いつもより慎重に。ネズミ捕りに捕まったら全てパーになる。無事故無違反で。

 

己に言い聞かせ続けながら、順調に国道をひたすら走る。週末の夜のドライブも割と楽しい。仕事での戦いを終えた後、次は別の更なる戦いに向けて俺は行く。なんだか熱い想いを込めながら色々と考えているうちに、気が付けば師匠宅に到着した。師匠と奥さんに挨拶を済ませ、荷物を積み込みなおす。

 

師匠いわく、今夜は船宿でゆっくり過ごして朝早く磯へ行くらしいので早めの出陣となった。途中に師匠のお弟子さんを乗せ、皆満面の笑顔だ。

 

うっしゃぁあ!いざ!和歌山へ!!

 

途中、石鯛のエサと人間のエサ(?)を調達し、またハンドルを握る。車のラジオから流れ来る拓郎の「夏休み」を聞きながら車は軽快に湾岸ロードをひた走る。これもまた大人の青春みたいで懐かしい心地よい気持ちになっていた。

 

それから我々一行は、ぼんやりと明かりの灯る船宿に到着した。まだ釣行は早いと言う事でひとまず仮眠をとる。しかし俺は気持ちが高ぶりすぎて、どうもすぐには眠れそうになかった。

 

師匠達はすぐさま高いびきをかいていてる。羨ましい限りである。仕事も忙しいんだろうけど、そもそもこういった釣行への場数の違いだろう。そんな事を考えながらどれ位時間が経ったろうか。船宿の扉が開き、続々と釣り人が出てきた。

 

おはようございます!

 

俺が挨拶をすると、向こうも微笑み返し会釈してくれた。何となく話声を聞いてると地元の方な感じがする。この辺りの領域をよく知っている熟練者だろうか。

 


それから、船長さんがやってきて一言。

船長

皆さん、おはようございます!早速準備をして下さい!お願いしますー!

 

師匠!船長さんが来ましたよ!

 

むくりと起き上がった親方は、

 

鉄工筋 親方

さ~あ!気合を入れて行こう!

 

俺の肩を強く叩きながら豪快に言った。

 

 

和歌山の磯リベンジ 石鯛デビュー戦


早速車から道具を下ろし、船に荷物を積み込む。そして俺らは船に乗り込んだ。客室へと行くと、多くの釣り人の群れで満員御礼状態だった。

 

そんな常連さん達の中で、いっぱしの釣り師を装う俺がいた。今日はデビュー戦だから負けてられない。そんな思いだった。

 

少しでも寝ようと目をつぶるが気持ちが高ぶってるので眠れぬまま時だけが過ぎてゆく。しばらくすると急にエンジン音が小さくなる。

 

外に出てみると、真っ暗な礒岩に船のサーチライトが当たり初めて見る幻想的な世界がそこにあった。次々に人が降りていく、師匠はまだ座ったままだ。

 

鉄工筋 親方

慌てるな!わしらは、最後のはず。まあ~座っときな!

 

居ても立っても居られないソワソワしている俺を見たみんなが大笑いしてる。喫煙者率も高いせいか、海の上なのにタバコの煙が一段とモクモクしている。

 

俺は逸る気持ちを抑える為に、タバコに火を付け思い切り吸って、「ふ~う」と煙を吐いた。

 

船長

次行きますから、荷物を出しておいてください!

 

鉄工筋 親方

よし!いくぞ~!

 

気合いの入った師匠の声が船内に響き渡った。いよいよ待ちに待った時がきたようだ。

 

サーチライトに照らし出された岩は感動ものだった。全て荷物を降ろし終わり、帰りゆく船に皆手を振る。しばらく夜が明けるまで動くなと言われ、少し眠ろうと俺は目を閉じた…

 

鉄工筋 親方

アキ!起きろ!

 

親方の声で跳ね起き、辺りは夜明け前の景色が広がっている。みんなは既に準備をしてる。気が付けばぐっすり寝てしまい慌てて起き上がる。師匠は一合瓶の酒を持ち

 

鉄工筋 親方

御神酒(おみき)を上げるから手を合わせ祈願するぞ。

 

御神酒とは?

御神酒(お神酒、おみき)とは、神饌には欠かせないもので、日本古来から伝わる祭礼において、お神酒(傾向として日本酒が使われる事が多い)を神前に供え、祭礼の終了後直会でお神酒を戴きます。神様に供えられ霊が宿った酒を頂き、また他の神饌と同様の神様と同じものを飲食するという意味があります!
また、造り酒屋によっては、新酒を神棚に供えるところもあるようです。

つまり、神様にお供えをすることで霊力を宿った神聖なお酒を頂くことで、その神様の霊力を体内に取り込み、建前などの安全を願ったり、お宮参りで健やかな成長を願ったりします。
引用元:HITOIKI

朝日の登りくる先端に立ち御神酒を撒き、みんなも師匠に合わせ二礼二拍手する。

 

鉄工筋 親方

アキ!お前の練習の成果を今日は見せてもらうからな、先に仕掛け作っていいぞ!

 

師匠はウニ殻を打ち始める。急いで竿をセットし仕掛けにかかる。ピトンを打とうとウロウロしてると

 

鉄工筋 親方

お前は、そこでやれ!

 

師匠が指を指す。そこは潮が当たり良さそうな感じがした。全ては本の情報でしか知り得ない事で、果たして通用するかわからなかったのだが、直感で今日は釣れるかもしれないと淡い期待が出てくる。

 

さて!

 

気合いをいれ、初沖磯1投目を投げる。いい感じで飛んでいった。練習の成果でパーマ(バックラッシュ)もなくうまくいった。

 

鉄工筋 親方

おお~!なかなかええやんか!

 

と拍手してくれた。俺は竿を立て戻しと海溝を探す。

 

何度か繰り返してると、スーッと糸が入ってゆく所を見つけた。これは師匠から学んだ技だった。竿をピトンに掛け、尻手ロープをかける座り込んだ。

 

それから、どれ位たっただろうか。穂先を見てると「コツン、コツン」と前当たりがあるではないか。俺は思わず

 

師匠!今何か当たりました!

鉄工筋 親方

まだまだやで~慌てるな!

 

とその時!穂先が海中につき刺さった。慌てて俺は走り寄り、竿をピトンから外し持ち上げると、重量感のある手ごたえがグンッと体全体に伝わって来るではないか。

 

それから、奴は一気に走り出した。チヌ釣りしかやった事のない俺は

 

なんじゃコイツ!エライ走りよる!

 

耐えるのが精いっぱいでとても糸の巻ける状態ではなかった。腰でためながらひたすら耐えた。

 

続く…

 

https://gurenavi.jp/2017/0811035134.html

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