近くにいた釣り師との出会い

全ては1人から始まった物語

 

小学生から釣りを覚え、何も考えずにただただ面白く熱中したあの頃
そんな事も成長するにつれ興味も薄れていった

 

卒業後、宮崎を離れ関西へと就職、やがて都会の暮らしにも慣れ仕事に没頭する日々が続く
そんな時間の余裕もない生活を過ごしていたある日の事

 

ふと観たTVに釘付けになった、それは「和歌山の磯 石鯛釣り」のシーンである
その時、俺は強烈なカルチャーショックを受けた

 

今までチヌ釣りしかやった事なかった俺の心に何か熱いものが込み上げてきた事を覚えている
その日を境にいつも石鯛の事ばかり考える日々を過ごした

 

人生とは不思議なもので まさかこんな近くに運命の出会いがあるなんて知る由もなかった
毎朝駅に出かけいつものようにスポーツ新聞を買う、休憩時間になると釣り情報ばかり見ていた

 

そんな時、鉄筋工の親方がにやけた顔で

 

鉄工筋 親方
鉄工筋 親方

監督さん!釣りやんの?

 

とスポーツ新聞を見て言われた

 

俺

はい!まだ関西に来てから1度も行った事ないんですけど…

 

鉄工筋 親方
鉄工筋 親方

あぁそう?じゃあ今度一緒に行く?

 

俺

えぇ!ホンマですか?

 

俺は驚いた!あまりに唐突でしかもこんな身近な所で、しかも連れてってくれると言う
あまりに突然な事で驚いた

 

休憩時間も終わり、親方から仕事が終わってから詳しい事はその時にと言われ、別れた

 

それから、時計ばかり気になっていた、こんな時の時間っていつもより遅く感じるものだなと思った
仕事もひと段落つき、現場事務所に戻ると、進捗状況を所長に報告し急いで日報を書き終えた

 

俺

じゃ!お先に失礼します!

 

と言うと

 

みんなが

 

現場の連中
現場の連中

えぇ~!デートかぁ~?(笑)

 

とヒヤかされた

 

俺

あははは~!ヒゲの生えた人ですよ(笑)

 

下には鉄工筋の親方が待ってた

 

鉄工筋 親方
鉄工筋 親方

飯でも食おうか?

 

現場から出ると親方は手を上げタクシーを止めた、二人を乗せ走り出した
車の中では釣りの話で花が咲いた

 

鉄工筋 親方
鉄工筋 親方

話は変わるけど、監督さんの生まれは何処なの?

 

と急に聞いてきた

 

俺

はい!自分は宮崎です

 

鉄工筋 親方
鉄工筋 親方

おお~いい所やね!昔、新婚旅行で行ったな~!
「日南海岸」と「鬼の洗濯岩」が印象に残ってるなぁ~

 

俺

まぁそれ以外は何もないですよ(笑)

 

と俺は笑いながら答えた

 

明石駅でタクシーを降り、1軒の焼肉屋に入った

 

鉄工筋 親方
鉄工筋 親方

好きなもの何でも食べたらいいよ!

 

と親方は笑顔で言ってくれた

 

程よくアルコールも入り上機嫌で店を出た、しばらくタクシーが拾える所までと歩く

 

タクシーに乗ると親方は

 

鉄工筋 親方
鉄工筋 親方

近くに部屋を借りてるからチョット行こう!

 

駅から20分位走って着いたのは、閑静な住宅街
案内されたのはそんなには古くもない2階建ての1軒家だった

 

俺

お邪魔します!

 

鉄工筋 親方
鉄工筋 親方

誰もいないよ!

 

と中に入ると和室の間に通された、直ぐに目に付いたのが床の間に立並んでいる竿の多さに驚いた

 

しかも今まで使っていた竿なんて、貧相なチヌ竿、とても俺の物とは比較にならなかった
俺の心を見抜いたのか、親方はその竿を全部俺の前に並べた

 

俺

これはもしかして、石鯛釣る竿ですか?

 

鉄工筋 親方
鉄工筋 親方

うん!せやね、石鯛竿やで^^

 

手入れの行き届いたピカピカの竿を目で追った

 

鉄工筋 親方
鉄工筋 親方

どれか好きな気に入ったヤツ選び!

 

と親方が笑顔で言う

 

俺

えぇ!石鯛釣り全然やった事ないし、しかも親方の大事な宝物やしそんな物を?

 

鉄工筋 親方
鉄工筋 親方

いいんよ!10本20本持ってても、使うのはせいぜい1本か2本
床の間に飾っててもそれこそ宝のもち腐れ、使ってくれれば竿も喜ぶはず!

 

そんな熱い親方の気持ちに甘えさせてもらい、俺は1本を選んだ

 

鉄工筋 親方
鉄工筋 親方

竿だけでは釣りにならないからこのリールを使って

 

と押入れから1個のタイコリールを出して下さった

 

俺

すいません!何から何まで…

 

鉄工筋 親方
鉄工筋 親方

監督さんが釣りをするってもっと早くわかってれば…
あの頃一緒に行けたのにしばらくは、コンクリート打ちがあるしちょっと暇作れそうにないしね
コンクリート打設完了してから行きますか?

 

俺

ですね!よろしくお願いします

 

鉄工筋 親方
鉄工筋 親方

今日はもう遅いから泊まったらエエよ!布団は何組もあるから

 

俺

それでは甘えさせてもらいます!

 

酒のせいもあってか、心地よい眠りに落ちた
あの日があってからは仕事にも熱が入った

 

夜になると宿舎で親方から借りた仕掛け集の本を読み
現場の前には池があるので 毎晩毎晩振り込みの練習をする日々が続いた

 

ようやくコンクリート打設も完了となり、ひと段落つき
もう頭の中は石鯛の事で一杯になっていた

 

終礼後、親方に「終わったら家においでよ」と言われた
仕事を全て済ませ、逸る気持ちを抑えながら車を走らせた…

 

続く…