Kからの電話から2週間経ったころ…ようやく仕事も落ち着き、時間の余裕が出来たのでKに電話を入れてみる事にした。宮崎県南日南市油津の1級ポイント。もしかしたら地元以外の磯釣りやってらっしゃる方は一度は聞いた事あるかもしれない。
Kとの電話
▼前回のあらすじ
https://gurenavi.jp/2018/0415123850.html
お疲れさん!いま電話大丈夫か?
はい!大丈夫です!
歯切れのいい返事が返ってきた。
明後日の土曜日どうだ?油津に行くか!?
えっ!マジすか?
ああ!ヒゲに乗るか?
ええ~あのヒゲですか~!ハイ!絶対行きます!
電話の向こう側からKのはしゃぐ様子が伝わってきた。
船長からの頼み事
事前に船長さんに連絡を入れてヒゲ瀬の当番日を聞いて予約を入れておいたので心配なかった、念のために船長に電話を入れた。
もしもし俺です、予定通り土曜に2人でいきます。
そうか、わかった!あと、ちょっと頼みがあるんやけど?
船長が間髪入れずに、チャキチャキと話始める。
お前の知っとるあの警察官のMさんが、一緒に釣らしてくれと言っとるけど構わんか?
Mさんがですか?ああ~いいですよ、3人でも出来るから大丈夫!
そうかそうか、ありがとね!さっそく連絡しとくわ、Mさんも喜ぶわ^^
船長との長い話を終え、Kに電話入れる。
お疲れさん!一人ゲストが来るからそのつもりで。あとは予定通りで船長さん家に6時集合やから4時半に迎え来てくれるか?
了解しました!
電話を切り、さっそく頭を釣りモードに切り替える。いつもの癖だ。
まずは釣具屋さんに行き小物を買い込みエサの予約を入れて帰宅する。久々でもある宮崎県南日南市油津の1級ポイントである瀬、ヒゲバエの釣行の日がいよいよやってきた。ここヒゲバエには特別な想いがある、いつも乗るたびワクワクな気持ちにさせてくれる。そしていつも色んな夢をみさせてくれる、そんな夢がある「磯」だ。
随分昔の話 夏の始まりで暑い日の出来事の回想
とある日。いつものように船長にここでやれ!と一人でヒゲに乗せられる。朝早くから俺はいつものように竿出しをしていた。
いつも通りコッパクロと戯れ、飽きがきたら昼寝としゃれ込む。そしてどれぐらいたったのだろうか。すっかり寝込んでしまい降りかかる波のしぶきでパッと目が覚めた。
起き上がり海を見るとすっかり潮が満ち、鮮やかな青色に変わっているではないか。
オオ~いい色の上りが入ってきてる…
本当にこんなきれいな上り潮今まで見た事ない、余りの絶景に暫く海を見つめていた。ようやく気を取り直し竿を握りコマセを際に振り込む、腕時計はすでに3時を指している。
サングラスを通して海中を覗くと下でかなりデカイ奴がコマセを拾っているではないか。それを見ると身体に熱い血が駆け巡った。
早々に仕掛けをセットし一投目を振り込んだ、際にコマセを3つほど入れ当たりを待つ。
大物ヒット!果たして軍配はどちらに?
いつもながらこの緊張感がたまらなく好きで至福の時だ。流れゆく潮に馴染んだウキがシモリ始めた…
いけ、いけ…
オープンベイルにした糸を中指で押さえ穂先に全神経集中する。
「ギュン~!」
と穂先が海中に刺さり押さえた指から糸が出たのだ。
来た!これはかなりデカイ!!
糸から伝わる重量感が半端ない。ここでひとつの不安が浮かび上がってくる。際で食わせるとなかなか難しいし幾度となく痛い目をみている。
そんな過去の思い出が頭をよぎっている間。その一瞬を奴はやはり見逃さなかったのであった。
ため切ってた穂先が弾き戻った、奴に軍配が上がった…
リベンジ大物ゲットなるか
張りつめていた糸がひらひらと風になびいている、明らかに俺の負けを物語っていた。おそらくこのままじゃ同じ結果に終わると思い、奴らを沖に誘い沖で勝負しようと考えた。
運良く潮が沖へと払い出しその先には本流がいる、正に絵に描いたような好条件である。逸る気持ちを抑え仕掛けをやり直す、今度はシンプルな「全游動」でやってみる。
▼磯釣り初心者の方はこちらをどうぞ。
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仕掛けを振り込み潮の流れに乗せてゆく。次第にウキが沖へ沖へと潮壁に行ったのかウキが少しづつシモリ始めてゆく。所謂、そこが潮壁だ!
出していた糸を指で押さえ、しばらく糸を止めた状態で様子をみる。横に寝かせた竿を軽く引いてきいてみた。すると、いきなり「ゴンッ」と竿ごと持っていかれたのだ。
来た!狙い的中!
竿を起こす分だけ糸を出しベイルをロックした。それから強引にこっちを向かそうとするが中々奴もしぶとい。何度か竿でいなしているとようやくこっちを向いてくれた。
これでようやくこちらに主導権が取れた。それから何度かの締め込みをかわしようやくGETとなった。
それからはパターンがわかり、入れ食いモード突入。イサキにクロがクーラー満タンとなったので納竿する事にした。全てのクロ45~50cmと滅多にこんな条件に巡り会うことない。「今回も二匹目のドジョウ」を狙い、ヒゲに想いを馳せたのだった。
釣り師3人が合流
午前4時20分に合わせた目覚ましが鳴り響いた。眠い目をこすり目覚ましを止め洗面所に向かう。顔を洗って頭も気分もシャキッとなる。
部屋に戻りハンガーにかけてある戦闘服に着替えKを待つ。約束の時間通りキッチリにKは現れた。
道具を積み込みいざ油津へ。道中は世間話や今日の意気込みなどを話しながら、何のトラブルもなく少し早めに港に到着。まだ少し時間があるので道具を降ろし二人でコマセ作りを始める。一通り作り終わる頃、後ろから車が一台やって来た。
おはようございます!
挨拶は警察官のM氏である
おはようございます!おひさしぶりですね!
ハイ!よく来るんですが、中々釣れなくて今日はよろしくお願いします!
笑顔で答えるM氏であった。釣り談話で盛り上がっていると次々と釣り人が集まってくる、中には見慣れた顔ぶれもいた。釣り仲間のネットワークができるので世間は狭いものだ。
すでに船長が岸壁にヘッドホースを付け我々を待っていた。早々に皆で荷物を積み込みようやくの出船となった。
まだ薄暗い中、瀬を照らしながら釣り人を次々と降ろしてゆく。風もなくウネリもなく海の状態はいい釣り日和を思わせる。全ての釣り人を降ろしたところで最後はいよいよ我々の番。
荷物を前に運び準備する、先にM氏とKを瀬に降ろし荷物を手渡しする。荷物を降ろし終えると、船頭に手を挙げて感謝を伝えて見送った。
まだ少し薄暗いので二人に明るくなってから動こうと伝え、バックから水とコールマンを取り出しコーヒーを沸かすことにした。磯でのモーニングコーヒータイムである。全然慌てることはない。じっくり今日の作戦会議も兼ねながら、頭の中を整理していく大切な時間でもある。
ようやく朝陽が磯を照らし始めた。まず始めに行ったのが荷物を高い所に集める事。そこからM氏、Kにコマセを撒くように伝えた。その間に竿を取り出し仕掛け作りを始めた。仕掛けを作り終えたのでバッカンを抱え二人と交代することにした。
少しづつ瀬際に丹念にコマセを打ち込む。奴らをおびき寄せるために。辺りはすっかり陽も上がり、海も黄金の輝きで一瞬心洗われる気持ちにさせてくれた。後ろの二人を見ると楽しそうに何か話している。
初対面の二人なのに釣りでこんなに仲良くなれるのかと改めて感心した。俺も少しフッと笑みを浮かべ、いよいよ戦いの始まりを告げる事にした。
そろそろ始めようかね!
と言うと二人して笑顔でやってきた。ポイントを告げ、俺はしばらくギャラリーに徹する事にした。あくまでチームで楽しく安全な釣行ができるように。
サングラスをかけ海を見てると竿1本程のタナにかなりいい型がゆっくりと泳いでいる。二人にはまだ何の反応もないまま1時間が過ぎ去った。
まだ底から浮いてきとらんから底狙いをしたほうがいいみたいやね、全游動がいいかも!
仕掛けを変えた二人にベタ底を狙うからハリスを2号に上げるように伝える。仕掛けを変え潮に乗せる。静寂な時間が流れ、彼らは集中しているのか、ずっと一点を見つめ続けていた。シモリ気味の00が次第に入ってゆく。
当たりだ!
俺はとっさに叫んだが、その声は届かずM氏はまだ気づいていない。これからまさかこんな奴が来るなんて誰も予想できずにいた。
続く…